「効率よく成長したい」「タイムパフォーマンスを重視して最短ルートで結果を出したい」——いわゆるタイパ思考が加速する今、いかに無駄なくキャリアを築くかを考える就活生・若手社会人も多いのではないでしょうか。
しかし、スポーツでもビジネスでも、人が大きく成長する根底には、無駄だと思っていた小さなことや泥臭い遠回りが隠れていることが多々あります。
今回は、横浜FCのプロサッカー選手として活躍する入団2年目の熊倉選手と、アイグッズの若手社員(入社3年目のH.S、2年目のY.K)による特別対談を実施。
効率重視の今だからこそ知ってほしい、あえて「非効率」に向き合う理由と、自身の成長を生み出す、ひいては幸せに人生を生きるためのヒントをお届けします!
この記事の内容
成長は小さな積み重ね。
「きついこと」ほど逃げず、地道な行動を当たり前にやる

本日はよろしくお願いいたします! 今回は、入団2年目にして百年構想リーグの副キャプテンという重責を担い、第一線で活躍されている熊倉選手にぜひ「成長」についてのお話を伺いします。その若さで、周囲も認めるこれほどの実績を積み上げられている秘訣は、なんだと思われますか?

そうですね…。特別なことをしてきたとかではなく、毎日、実践をイメージして練習しつづけてきたこと、それに尽きると思います。

なるほど、特効薬があるわけではないんですね。ちなみに、一番成長を体感した時期はいつなのでしょうか。

高校の3年間ですね。出身の新潟県を離れて寮生活になり、周りのレベルに圧倒されて、思い通りにいかない毎日に最初はすごく焦っていました。

その「うまくいかない」真っ只中で、考えや行動はどのように変化していったんですか?

最初は「なんで試合に出られないんだ」と環境や他人のせいにしそうになったり、悩むだけで終わっていました。でも、それでは何も変わらないと気づいて、「他人と比べるのではなく、まずは自分を見直そう」と思考を切り替えたんです。そこから、毎日出た課題を一つひとつ見つけて、それを潰すための行動をとるようになりました。

外側に目を向けるのをやめて、内側、つまり自分の課題と行動に向き合い始めたんですね。具体的に、日々の練習や自主練のなかで、その課題をどのように潰していったのですか?

まずは「自分の長所と短所」を正確に把握することから始めました。僕の長所である左足のキックは、全体練習の後に仲間と自主練で徹底的に伸ばし、逆に短所だった守備のプレス強度※1などはフィジカル面に近いので、フィジカルコーチと話し合いながらアジリティ※2のトレーニングを取り入れていました。
そうやって、どんなにきつい日でも、毎日の自主練まで「100%の力でやり切ること」を自分に課し続けた結果、自分の中の「当たり前の基準」がグッと上がりました。サボりたいという感情に負けず、やるべき行動を淡々とこなす。これがごく普通のベースになったこと自体が、当時得られたものだと感じています。
※1プレス強度:チームがボールを持っている相手選手にかける圧力の激しさや、ボールを奪い返すためにどれだけ積極的に守備を行うかを示す度合い
※2アジリティ:「身体をいかに素早く、かつ的確にコントロールして動かせるか」という能力


毎日100%でやり切ることが当たり前になるって、結構難しいことですよね。僕自身、昨日を振り返って「100%やりきった」とは言い切れないかもしれないです…!
ちなみに、僕も仕事の中で自分の得意・不得意に向き合うことが多いのですが、プロの世界で戦う上で、弱みを潰すことと、強みを活かすことだったら、どちらが大切だとお考えですか?

僕の経験から言うと、まずはすべての項目で「平均点」を出せるようになることが先でした。苦手なことを無くして、どの試合でもミスしない状態を作る。高校時代はまさにその土台づくりに注力していましたね。 ただ、その「平均点」というベースがあった上で、プロの世界で頭一つ抜けて活躍するためには、特定の分野で誰にも負けない「自分だけの100点」を突き詰めて伸ばしていくことが大切になってくるな、と感じています。

まずは周りの基準まで自分を引き上げて、その先に初めて「自分だけの強み」を尖らせるフェーズがあるんですね。実はアイグッズでも入社1〜2年目は「徹底的に先輩の真似をして、まず仕事の基準を覚えよう」とよく言われるんです。 そうやって当たり前の基準を先輩たちと同じレベルまで引き上げて初めて、実際の商談でも「自分らしさ」を活かせるようになるんですよね。まさにビジネスも全く同じプロセスだなと改めて実感しました。

本当にそうですよね。「当たり前の基準を高く保とう」と習慣的に意識づけば、最終的に一番試合で生きてくると思うんです。 サッカーで言えば、攻守の切り替えでボールを奪われた後、しんどいけれど自陣に戻らなきゃいけない場面。自分が戻ったところで直接ピンチを防げるかは分からない。でも、そういう「きついし、しんどいけど、やった方がいいこと」から逃げずに行動できるかどうかが、試合の勝敗を分けると思います。

「やりたいか」ではなく「やるべきか」で動く。
自分の壁を越えるためのマインド術

そうした「やった方がいいけど、きついこと」は、頭で理解していても、「今日はサボりたいな」「きついな」と感情が邪魔してしまう瞬間もあると思います。熊倉選手は、どうやってその感情をコントロールしているんですか?

「自分の感情で動かない」ことは徹底するようにしています。高校時代に学んだことなのですが、「やりたくなくても、やんなきゃいけないこと」と捉えれば、絶対やらないといけない 。きついからやらない、逃げるという選択肢をとってしまうと、掴めるものも掴めなくなり、チャンスも減っていきます 。だから「きついから逃げる」という選択肢は僕の中に一つもありませんでした。

1つも…ですか…。すごいです…。でも、それって元々ものすごくストイックな熊倉選手だからできたんじゃないかな、とも思ってしまいます。サッカーを始めた幼少期から、ずっとそういう風に考えられていたんですか?

流石に幼少期からこの考えを持っていたわけではないです(笑)。
僕は小中高大とずっとキャプテンをやらせてもらう機会があったのですが、考えが変わったきっかけは小学生時代の監督の言葉でした。結果が出なくて悩んでいた時期に、「キャプテンの責任は、チームの全員から好かれることじゃない。誰よりもチームの勝敗を自分のこととして背負うことだ」と言われたんです。
その言葉をきっかけに、一気にチームに対して当事者意識をもつようになりました。「自分が曲がった生き方をしていたらチームに示しがつかない」と本気で思えるようになったんですよね。そこから、良い影響を周囲に与えるために、自分の「やりたい・やりたくないという感情」と「チームのやるべきこと」を分けて行動するマインドに変わっていきました。

自分の感情と、役割を区別する……。言葉にするのは簡単ですが、それを実際にやり切るとなると、大人でもなかなか難しいことだと思います。当時学生だった熊倉選手は、具体的にどのような行動をとられていたのですか?

そうですね、例えば高校時代では、全体の前では言えない悩みを持つ部員のために、1日3人ずつ個別に話を聞く時間を設けて、一人ひとりが何を考えているのか情報を集めるようなこともしていました。組織を引っ張るためには、「自分は嫌われてもいい」と割り切って、全体の前では厳しいことを言い、1対1では優しく寄り添う。そして自分の悩みの吐け口として副キャプテン2人にフォローしてもらうなど、組織の目標達成のためにどうすればいいかをずっと考えて行動していました。

「チームを勝たせる」目的があるからこそ、「嫌われたくない」といった自分の感情を捨てて行動できたんですね。
感情を切り分けるといっても、孤高のリーダーになることではなく、目的達成のために「周囲を巻き込む仕組み」も重要ですよね。チーム全員がブレずに同じ目標へ向かえたのも、熊倉選手が副キャプテンを頼る体制をチームの中に構築されていたからだと思います。

「内と外」に原動力をもつ。
厳しい局面でも「踏ん張り続ける」ための秘訣

「感情と役割を区別する」というマインドが、高い基準を保ち続けるための秘訣だと伺いましたが、いかなる時も、完璧に感情を割り切れるわけではないと思います。厳しい局面でも、踏ん張り続けるコツは、あるのでしょうか。

そうですね、「自分の内と外」に原動力を見つけておくことでしょうか。

ほう…、内と外ですか。

そうです。一つ目の「内」への原動力は、「自分の理想像を叶えよう」とする想いのこと。 日々、地道な努力を積み重ねていくためには、やはり「自分の時間やお金をいくらかけてもなりたい」と思えるような理想像を見つけることが大切だと思います。かっこいい人間になりたい、数字を残せる人間になりたいと思ったら、すでにその結果を残している人を見習うべきです。そんな理想像を自分の中で明確に見つけたら、あとはそれに沿った行動をただやるだけ。なりたい気持ちに対して、日々の地道な行動を徹底する。ただそれだけです。

自分との約束をつくることで、どんなときも基準を落とさないように徹底されていたんですね。

はい。そしてもう一つの「外」への原動力は、やっぱり「誰かのために行動したい」という想いですね。僕にとっては、家族やサポーターがその“誰か”にあたります。
実は、プロの道を選ぶか、一般企業に就職するかで本気で迷っていた時期があるんです。でも、双子の弟がプロに決まった時に両親が泣いて喜んでいる姿を見て、「両親が本当に望んでいるのは、プロになることなんだ」と思ったんです。一番大切である両親の喜ぶ姿を見ることが自分のやりたいことだと感じて、横浜FCのオファーを受けてプロの世界に飛び込みました。結局、自分のためだけじゃなく「誰かのために」と思った瞬間が、一番熱くなれるし限界を超えられるんですよね。


なるほど、外側に原動力をつくることで、どんなに厳しい局面でも踏ん張れる。その感覚、僕も社会人1年目のときにすごく体感しました。仕事で壁にぶつかって本当に苦しかったとき、3人もの先輩が、1年以上、僕に向き合ってくれたんです。ある時、先輩が涙しながら話してくれた瞬間があって。「あ、この人たちのことをもう泣かしちゃいけない。笑わせてあげたい」と心から思ったんです。どんなに案件量が増えても、「誰かのために」とベクトルが向いた瞬間、仕事への行動がガラッと変わって、甘えがなくなりました。

まさにそうです。誰かの存在があるからこそ、自分に甘えずに踏ん張れる。お互いに外側に強い原動力があるからこそ、絶対に妥協せずにやり切れているんだと思います。

「こうなりたい」という自分の理想と、「誰かのために」という他者への想い。その両方に原動力があるからこそ、どんなときも高い基準を落とさないように徹底できるんですね。
…熊倉選手、お時間も近づいてきましたので、最後にこれから社会へ羽ばたく就活生の皆さんに向けて、メッセージをいただけますか?

これから就活や社会人生活を迎えるなかで、「早く成長したい」「効率よく結果を出したい」と思う瞬間はたくさんあると思います。でも、本当に自分が決めた理想の姿に向かうときって、結局は泥臭くて地道な行動をどれだけ徹底できるか、ただそれだけなんですよね。
難しく考えすぎず、言い訳もせず、自分の理想に向かってシンプルに突き進んでほしいです。きついことや面倒なことから逃げずにやり切った先にしか見えない景色が絶対にあります。応援しています!
編集部より読者のあなたへ
「タイパ重視が正解」。世間のそんな空気に一石を投じるほど、今回の対談は熱く、地道な努力の先にこそ確かな成長が待っていると実感させられる時間でした。
ここで、今回熊倉選手が語った成長を生み出す秘訣を要約します。
<効率化の時代にこそ大事にしたい!対談から見えた成長を生み出す行動例>
1.「きついこと」ほど逃げず、地道な行動を当たり前にやる
2.「やりたいか」ではなく「やるべきか」で動く。 一時的な感情と、組織のなかで果たすべき役割をきっちり区別する。
3.原動力は「自分の内と外」につくる。 いくらお金を払ってでもなりたい「理想の姿」と、支えてくれる「他者への想い」が、高い基準を創り出す。
最後になりますが、今回インタビューをさせていただいた横浜FCの熊倉選手、本当にありがとうございました!
高校時代から厳しいサッカーの世界を生き抜いてきた人生には、日々の地道な行動を積み重ねて、当たり前の基準をどこまでも引き上げる覚悟と自らを律する強さがあったのだと思います。
熊倉選手から教えていただいた、「やりたいか」ではなく「やるべきか」で動き、感情に流されず、自らの役割をただ全うするというブレないマインドを持ち、私たちもさらに地道に突き進んでいきます!
